わたしは雪の中を一人で歩いている。夜で、街頭のオレンジがビカビカしていて、道の曲がり角の対の方向にはニトリがあった。あ、この辺って大きなニトリあったんだ、今度来よっとって思いながら黙々と歩いた。目的地は知らなかったけど、どの方向に歩けばいいのかはわかった。
そしたら同い年くらいの男の子が後ろから雪をザクザク鳴らして歩いてきて、覗き見るとその子がわたしの両親の写真をなぜか持っていた。
動揺している間に、男の子には追い越されて、わたしはその瞬間急に膝の力が抜けて折りたたまれるみたいに倒れてしまった。そうすると男の子がさすがに気を使ってくれて、「大丈夫すか、手、貸しますか」と振り返った。わたしは下を見ながらだいじょうぶですとだけ返した。1回目は掠れてて絶対伝わらなかっただろうから、2回目にはかなり大きな声で大丈夫です!と言った。
この道のすぐそばには老舗の時計屋があって、その前には都会だな〜っていう簡易な墓地があって、そこで好青年な男の人とちょっとギャルっぽい彼女がお墓参りしてた。
わたしは男の子が去るのを待っていたけれど、その子はいなくならなかった。だからわたしが「じゃあ、起き上がるのだけ手伝って貰ってもいいですか」って言うと、ほったしたみたいだった。わたしの脇に手を入れて、介護みたいに起き上がらせてくれた。でもわたしはまたすぐに倒れそうになって、男の子はうちで休んで行きなよと言った。わたしは目的地もなかったし、同い年の男の子なのに全然怖くなかったからその子に不思議とついていった。
その子の家はわたしの家とちょっと似てて、ちょっと違った。まだ両親は帰ってきてないみたいで、その子の部屋に連れてってもらうと幼馴染という男の子がまた二人いた。その二人のことも怖くなかった。 男の子の部屋はこれまたわたしの部屋に似ていて、でもこんなに似ているのに内装はちっとも似ているところなんかなかった。
わたしはずっときになってた写真を指差して、「なんでわたしのパパとママの写真持ってるの」と訊いた。そしたら向こうは驚いて、「これはうちの両親だよ」って言った。腹違いの兄弟とか、そういうことかとも思ったけど、こっちの家にもこの子の両親はいるらしかった。そこで写真をよく見せてもらうと、あんなに似ていたのに全然顔は似ていなくて、でもやっぱりすごく似ていた。ただ違う人なんだな、とは思った。驚くことに名前も一緒だった。わたしはなんかもうおちおち気付いてきていて、この子はわたしのもう片方?というか、わたしが男の子として生まれてきたときの人格なんだって思った。
わたしたちは四人でテレビを見た。おもしろくもないニュースだったのに、ゲラゲラ笑いながら見た。幼馴染のひとりがお茶をこぼしちゃって、わたしも咄嗟に「もー、きたなーい!ここわたしの部屋でもあるんだからね!わたしの部屋ではないけど!」みたいなこと言ってて、またみんなで笑って、そこで終わった。